酒造りにおいては「一麹、二酛(もと)、三造り」が重要とされていますが、浦霞ではその前工程、原料処理こそが造りの出来を左右すると考え、手間を惜しまずに取り組んでいます。精米された米を丁寧に洗米し、その年の米の質や日々の気候条件によって浸漬の時間を細かく調整。蒸米、放冷では蓄積してきた過去のデータも活用し、外硬内軟(※)の理想的な状態の蒸米にすることで、その後の工程も理想的に進んでいきます。
徹底した原料処理が、最高品質を追求する酒造りのスタートラインです。
※外硬内軟(がいこうないなん)
出来上がりの蒸米は、外側が適度に硬く、内側が軟らかいものが良いとされています。
浦霞の酒造りの基本は、平野佐五郎・重一が築き上げた南部杜氏流の酒造り。佐五郎は、吟醸造りの名人として知られ、特に麹造りに力を入れていました。
吟醸造りにおいては、温度・湿度を徹底管理した麹室(こうじむろ)(麹造り専用の部屋)で、五感を研ぎ澄ませて手触りや香りを感じながら、麹が蒸米の内部まで食い込んだ麹を造っていきます。麹菌の菌糸が米一粒一粒に食い込むように、しかし米を覆わないように繊細な動きで種切りをする(種麹を振る)重一の所作は芸術的ですらあったと後の杜氏は語り、その姿を追いかけるように今も麹造りに向き合っています。
全ての商品の麹造りにおいて、こうした経験と技術が生かされています。
南部杜氏流の真骨頂と言えるのが、低温長期発酵によるほど良い香りときれいな酒質を生み出すもろみ造りです。吟醸酒では10度以下の低温で30日ほどかけて発酵させますが、絶妙な温度調整が常に求められ、この状態を保つのが至難の業。
重一は「酵母の特長を生かす最適な温度を見極めるのが、杜氏が苦労する部分であり、出来上がると楽しみなところである」と語っていました。
仕込みから上槽までもろみの状貌(姿・形)は日々変化していきます。成分分析の結果ばかりでなく、杜氏を中心に蔵人が真摯に向き合いこの変化を読み取ることで、浦霞らしい香りと味のバランスの取れた酒を造り続けています。
1
精米
2
洗米/浸漬
3
蒸米/放冷
4
麹つくり
5
酒母つくり
6
醪(もろみ) 仕込み
7
上槽(じょうそう)※1
8
ろ過/火入れ※2
9
貯蔵/調合・割水
10
火入れ※2/瓶詰め
※1 アルコールを添加する場合は上槽直前に醪に添加いたします。 ※2 生酒等一部商品では火入れはいたしません。